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【TKO通信】~コロナウイルス休業で派遣切りは出来るのか?~

販売代行を検討中のクライアント企業様、そして現在販売代行にてご出店中で人材に関してご不安をお抱えのクライアント企業様へ。

販売代行企業の選び方は売上と同時にブランドや企業が地元に根付くかどうかを左右するため非常に重要です。

お陰様で毎回大変な好評を頂戴しておりますTKO通信ですが、前回【TKO通信】~新型コロナウイルスの影響で経営が厳しい代行会社やクライアントからのご相談を受け付けています~では同業者から特に『それが欲しかった!』とのお声を人事の方から頂戴しました。弊社は一貫性を持ち、販売代行企業では無く、人材総合コンサルティング企業としてクライアント企業様の人材問題を総合的にサポートしてまいります。今回はコロナウイルスの影響でブランド・クライアントと派遣会社でかなり難交渉になっている話題を取り上げ、【TKO通信】としてご紹介させて頂きます。Takeofferではお客様の具体的なお悩みにお答えし、その期待に応え、更には付加価値を創造する提案が出来るよう努めてまいります。※法的な具体的な助言が必要な場合は弁護士にすることをお勧めします

これまでの「経営・法令順守偏」に続きました 「販売ノウハウ偏」「代行における従業員のキャリアパス偏」「契約条件偏」、「研修制度編」、「インバウンド特別篇」TKO通信バックナンバーと併せて是非販売代行会社の選択にご参考下さいませ。

最初にすべきこと:派遣契約の内容を確認する

「新型コロナウイルスで休業するとき、派遣社員を切れるのか」という点を検討するにあたっては、まず派遣契約の内容を確認する必要があります。派遣会社から、派遣社員を受け入れている場合には、必ず派遣会社との間で「派遣契約書」を締結しています。このような未曽有の非常事態となり、派遣社員を切らざるをえない時でも、当然まずは契約内容にしたがった対応が必要です。派遣契約は、法人間で交わされている「基本契約書」(全ての派遣スタッフにかかる統一事項が定められているもの)と「個別契約書」(その派遣スタッフだけに適用される事項が定められているもの)がありますので、両方をチェックすることが重要です。

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不可抗力条項がある場合

さすがに派遣契約を結ぶ段階で、「新型コロナウイルス感染症」を想定して、この文言を明記した条項を最初から定めている契約書は恐らく皆無でしょう。しかしながら、事業継続上、地震・洪水・台風など(これは東日本大震災や昨今の大型台風を含めてあり得ます)、さまざまな「不可抗力」による休業がありえますので、このような状況を想定して、派遣契約書にも「不可抗力条項」が定められていることは一般的でしょう。従いまして、「不可抗力条項」の定めがある時が今回のケースにおいて指標となってまいります。

「不可抗力条項」とは

派遣契約書の条項において、「不可抗力により、派遣社員が就労しない場合には、乙(派遣元会社)は、甲(派遣先会社)に派遣料金を請求できない」といった、不可抗力の場合の免責が定められていることがあります。この場合、新型コロナウイルスが「不可抗力」にあたるかどうかは、個別のケースに応じて検討する必要がありますが、外的な要因であり、契約当事者が相当な注意を払っても、回避することができない場合には、「不可抗力」であることを主張し、派遣料金の支払を免れることができると解されるようです。

派遣料金を支払わなくてよい場合

派遣契約書において、派遣料金について派遣社員の実働時間に応じて決定される定めがあるときは、新型コロナウイルス感染症を理由とする休業によって派遣社員が実働していなければ、派遣先としては、派遣元である派遣会社に派遣料金を支払わなくてもよいことになります。また、派遣社員が就労していない場合は、派遣料金を請求できない規定がある場合、新型コロナウイルス感染予防のために国・自治体からの休業要請を受けての休業であれば、天災などの不可抗力による休業と同視できます。この場合にも、派遣契約書の条項に基づいて派遣料金を支払わなくてもいいと解されるようです。

派遣料金を支払なわければならない場合

派遣契約書において、「不可抗力条項」や、「派遣社員が就労していない場合には派遣料金を払わなくてもよい」旨の定めがある場合であっても、派遣料金を支払う義務を免れられない場合があります。休業要請の対象となっていない業種などで、派遣先会社が平時と同様の営業を続けているような場合など、派遣社員を不就労とする理由に乏しい場合には、不可抗力による不就労とはいえず、就労した場合と同額の派遣料金を支払うこととなります。派遣契約書によっては、「不可抗力」による休業であっても「派遣先が派遣社員の休業手当金額の全部または一部を負担する」という規定を設けている場合もあります。このような場合には、規定に基づいて算定される休業手当を支払う義務があるでしょう。

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派遣契約に定めがない場合

一方で、派遣契約においては、こうした不就労の場合を想定しておらず、派遣契約書になにも定めがない場合があります。また、あってならないことですが小さな派遣会社では、派遣契約書が存在しないことがありえます。このように契約書に定めがない(そもそも無い)場合には、民法に定められた原則にしたがって判断されるようです。

派遣料金を支払わなくてよい場合

民法の「帰責事由」の一般的なルールにしたがって、新型コロナウイルスの影響により派遣料金を支払わなくてもよくなるケースについて解説します。新型コロナウイルス禍のケースで、休業が当事者双方の責めに帰することができない事由であると考えられる場合には、派遣先は派遣料金の支払をしなくてもすくこととなります。休業が当事者双方の責めに帰することができない事由にあたる例としては、行政(国・自治体)から休業要請が出た場合や、出店している商業施設自体が閉鎖となり休業せざるをえない場合などがあげられます。また、休業が債務者の責めに帰すべき事由として、たとえば、派遣元会社で感染者が出たことにより派遣受け入れを止めざるを得なかった場合や、派遣社員自身が感染して休業に至った場合などには、派遣料金を支払わなくてもよいこととなるようです。

派遣料金を支払なわければならない場合

一方で、新型コロナウイルスの非常事態であっても、休業が派遣先会社の責めに帰すべき事由による場合には、民法の「帰責事由」の一般的なルールにしたがえば、派遣先は派遣料金を支払い続ける必要があります。
派遣先会社の責めに帰すべき事由による休業としては、行政から休業の要請が出ていないにもかかわらず、自主的に休業している場合や、派遣先会社内で派遣社員以外から感染者が出たため休業に至った場合などがあげられるようです。

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派遣契約自体を解約できるのか?

新型コロナウイルスの影響が大きいファッション・アパレル業界では、例え一定の休業について派遣料金の負担がなかったとしても、当面の休業では足りず、業務縮小を検討せざるを得ない会社も少なくないかと思います。そのため、派遣契約自体を解約したいという希望もあるのではないでしょうか。派遣契約自体は、派遣元と派遣先との契約です。そのため、その契約自体を解除することは条件を満たせば両者の合意によって可能です。つまり、派遣社員が必要ないときは、派遣契約が「派遣先と派遣元の契約である」という性質であることから、派遣社員を直接解雇したりクビにしたりするのではなく、派遣契約を解約することとなります。しかしながら、派遣契約の解除は、派遣労働者の雇用にとって大きな影響を与えることになるため、派遣労働者保護のためさまざまな規制が課せられています。

具体的には、派遣期間の途中で派遣契約を解除するときには、労働者派遣法29条の2と、「派遣先の講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)に基づいた対処をする必要があります。以下、厚生労働省のWEBサイトより引用します。

労働者派遣法29条の2(労働者派遣契約の解除に当たつて講ずべき措置)

労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。

「派遣先の講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)

1. 労働者派遣契約の解除の事前申し入れ
2. 派遣先における就業機会の確保
3. 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置
 ① 派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることができないときには、少なくとも中途解除によって派遣元事業主に生じた損害の賠償を行うこと
 ② その他派遣先は派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講じること
 ③ 派遣先は、派遣元事業主から請求があったときは、中途解除を行った理由を派遣元事業主に対し明らかにすること

「1. 労働者派遣契約の解除の事前申入れ」については、派遣先は、派遣元事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除の申入れを行う必要があります。一般的には直接雇用従業員の解雇予告と同様に30日前以上の期間を設定することが多いでしょう。
「2. 派遣先における就業機会の確保」については、派遣先は、複数ブランドを持っている場合などは、その別ブランドでの就業をあっせんするなどにより、派遣労働者の新たな就業機会の確保を検討したうえで、それでもなお派遣契約を解除せざるを得ないという事情が必要となります。
「3. 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置」のうち、「①」の損害賠償について、指針は次の賠償をあげています。
ア 派遣元事業主が派遣労働者を休業させる場合は、休業手当に相当する額以上
イ 契約解除の申し入れが相当な猶予期間をもって行われなかった場合に派遣元事業主がやむを得ず解雇する場合は、次の賃金に相当する額以上
(ⅰ)派遣先の予告がないために派遣元事業主が解雇予告ができなかったときは、30日分以上
(ⅱ)解雇予告の日から解雇までの期間が30日に満たないときは、当該解雇の 30日前の日から当該予告の日までの日数分以上

なお、2020年3月5日に、新型コロナウイルス感染症に関して、厚生労働大臣から雇用維持などに対する配慮の要請がなされています。そのため、派遣労働者の雇用維持については柔軟な配慮が求められていることについては留意すべきでしょう。「コロナウイルスの影響で・・・」とだけで簡単に派遣を終了することは出来ませんので気を付けることが必要です。

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まとめ~一方的な主張では無く双方の事情を踏まえた歩み寄りを~

今回は、新型コロナウイルスの影響で売上が激減したとき、経費削減のために「派遣切り」や派遣料金の支払いを拒むことができるかどうかについて取り上げました。業績悪化を原因とする派遣契約の打ち切りについては、やむを得ない解除であっても、派遣労働者の就業機会の確保などの措置をしっかりと尽くしているかが重要となります。特に、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で業績が悪化しているときは、政府が企業を継続させるために実行している施策の活用を検討しなければなりません。派遣社員を解雇して、人件費を削減するにしても、その方法にはさまざまな考慮が必要となり、法的な観点、経営的な視点の双方から判断しなければなりません。また法律を盾にして、一方的に自社側の権利を主張するアパレル企業や派遣会社も多いと聞きますが、今回の解釈は弁護士や社労士によっても大いに分かれることもあり、訴訟になって結果的に更にコストが高くなったり、そのやり取りでの不誠実な姿勢がレピュテーションリスクを高めかねません。大切なことは、双方が敬意を持ち、派遣社員を、人材を大切にすることです。この問題の数カ月前までは圧倒的な労働力不足がありました。そこで必要だった人材を急遽切ったり、お願いしていた派遣会社を急に冷遇したり、また派遣会社も当時の情勢を盾に横柄だったり、と問題は多いでしょう。しかし新型コロナウイルス感染症の影響はファッション・アパレル業界に大きなダメージを与えています。ここは業界内でも力を合わせて、全関係者でこの難局を乗り越えるという姿勢が重要でしょう。一方的な主張では無く、双方の事情を踏まえた歩み寄りを意識することが大切です。常に謙虚に大いなる視点を持つことが永続性のカギを握っています。

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ーお知らせ(現在の予約状況:北海道・沖縄地区の人材登録が増えています!!)ー

北海道、沖縄エリアに特化していた弊社ですが四国、中国地方、北陸地方、名古屋地区、東京都内での販売代行運営を開始、今後は全国どこでもTakeofferクオリティでの運営が可能になりました。またお陰様で現在大変多くの人材登録を頂き、またクライアント様よりご依頼を頂いております。しかしながら弊社では双方にとってリスクの多いことから、無理受けすることを致しておりませんが、現在、強みを持っている北海道地区(レラ・MOP北広島・札幌市内の百貨店)で店舗が増え、沖縄地区でも県内最大商業施設である(サンエー浦添西海岸PARCO CITY)へ出店を成功させています。現在北海道および沖縄地区では常駐の担当がおり、スケールメリット確保による運営の受注が出来るケースが増えると共に、登録人材が一気に増えておりますので一度お気軽に担当までご相談下されば幸いです。また、株式会社Takeofferはアパレルコンサルティング以外にも公認会計士・税理士等財務のスペシャリストがおりますので運営条件を根拠のある数字で明解にご提案しております。

今回の【TKO通信】はコロナウイルスの影響で派遣切り(契約終了)を行ったクライアントと派遣会社が訴訟になったり、揉めているケースが多いことを受け、そのアドバイスとしてお伝え致しました。このようにクライアント企業様には安心してご依頼頂くことが出来る、そして従業員の皆様には安心して就業出来る環境をTakeofferは用意しております。これからも少しずつお客様から頂戴しておりますお問合せや現地からの情報をご紹介させて頂きます。これからの少子高齢化に伴う主要人材確保が困難になる時代の中で確かに貢献すべくTakeofferは常に進んでまいります。
アウトレットモールや百貨店、オフプライスストアへの販売代行でご出店をご検討もしくは出店中でお悩みをお抱えのクライアント様は是非お気軽にご相談下さいませ。

※現在コロナウイルスの影響により、休業している施設が多いため順次再開してからの案内になる場合がございます

● Auther
Takeoffer 販売代行エージェント

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ラグジュアリーブランドの人事として人事業務全般、主にリクルーティング責任者として従事。その後独立しファッション業界専門の販売代行・労働者派遣事業・有料職業紹介事業を中心に提供中。業界を整えることをミッションとしています。

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